
こんにちは!
臨床検査技師のぴぃすけだよ。
今回は心電図の『LGL症候群』について詳しく解説をしていくよ。
これと同じような理由で出てくる波形としてWPW症候群というものもあるんだけど、それとの違いは何か?
そういった内容も含めて
- LGL症候群とは?
- LGL症候群の心電図の波形について
- 気を付けるべき不整脈
- WPW症候群との違い
こういった内容で、この1記事読めば、しっかりLGL症候群について理解できるようにまとめていくよ。
LGL症候群とは何か
LGL症候群っていうのは、心電図で
こういった特徴をもつ状態のことなんだよ。

ちなみに副伝導路は分かるかな?

えっと、、副ってつくくらいだから通常とは違う伝導路ってこと?

そうだね。本来の刺激伝導系とは、別に伝導する場所だね。波形を見る時に詳しく解説していくね。
昔は「この心電図の特徴があって、動悸などの発作が起きる人」をひとまとめにして、LGL症候群って呼んでいたんだ。
ただ今の医学では「LGL症候群ははっきりした一つの病気なの?」っていう点は、ちょっとあいまいになってきていたりもするんだ。
だから最近は、「LGL症候群です」と断定するよりも、
なぜPRが短いのか、どんな不整脈が起きているのか
これを一つずつ考えることが大事だよ、っていう流れになっているんだ。
LGL症候群の名前の由来

これって何かの略なの?

人の名前だね。
LGL症候群の名前は、
- Lown(ラウン)
- Ganong(ガノン)
- Levine(レヴィン)
という3人の医師の名前からきているんだよ。
1950年代に、この3人が「PRが短くて、発作性の頻拍を起こす人がいる」って報告したのが始まりなんだ。
今は、副伝導路のジェイムス束によるものだと分かったけど、当時はまだ、心臓の中の細かい電気の通り道までは分かっていなかった。
だから「WPW症候群とは違うけど、なんだか似た特徴をもつグループ」として、LGL症候群という名前が付けられたんだ。
LGL症候群の心電図
そうしたらLGL症候群を考えるときに、一番大事になるのが心電図について解説だよ。
特に見るポイントは…
この3つを、しっかり確認することが大切だよ。
ここを押さえておくと、WPW症候群との違いもスッと理解できるよ。
LGL症候群の典型的な心電図パターン
波形としては、こういった形になるよ。

「房室伝導は早いけど、心室の興奮のしかたは普通」っていうのがポイントなんだよ。
見た目だけだと「PRが短いなあ」と思うくらいで、QRSはきれいな形をしていることが多いんだ。
PR(PQ)間隔が短縮する理由

でもこれってどうしPQ間隔が短くなるの?

ここで重要なのが、最初に話したジェイムス束っていう副伝導路だね。
PQ間隔が短くなるっていうのは、心房から心室へ電気がいつもより早く伝わっているってことを意味しているんだよ。
PQ間隔は房室結節あたりを伝導している部分なんだ。
この付近は伝導速度がゆっくりだから、PQ間隔が存在しているってわけ。
でもLGL症候群の場合には、そこに
『房室結節の伝導よりも伝導速度が速い副伝導路(ジェイムス束)が存在している』
だからPQ間隔が短縮するんだ。


こんな感じだね。
ただ今では「必ず特別な近道がある」とは限らなくて、房室結節のブレーキが弱めで、電気がスッと通ってしまうタイプも多いと考えられているよ。
だから『PQが短い=すぐにLGL』というわけではないから注意してね。
QRS幅が正常でデルタ波が出ない理由
波形でPQ間隔以外に重要なのが
『デルタ波が出ない』
これになるんだ。
LGL症候群では、心室が興奮し始める場所は、ちゃんとHis束の先なんだ。
そのため、心室の中の電気の広がり方は普通で、QRSは広がらないんだよ。
WPW症候群みたいに、心房から直接心室の筋肉に電気が入るわけじゃないから、デルタ波も出てこないんだ。
LGL症候群で起こりやすい不整脈
LGL症候群が話題になる理由は、「心電図の見た目」そのものではないんだ。
動悸の発作などの不整脈を起こしやすいって点にあるんだよ。
ただし、すべての人に症状が出るわけじゃない、というのも大事なポイントだね。
次は、どういった不整脈が重要になるのかをまとめていくよ。
発作性上室性頻拍(PSVT)
LGL症候群と一緒によく出てくるのが、発作性上室性頻拍(PSVT)なんだ。
これは、
- 突然ドキドキし始めて
- 心拍数が一気に速くなり
- しばらくすると急に止まる
こんな特徴をもつ不整脈だよ。
波形としては、こういった感じだね。


なんか危険そう…。

そうだね。危険な不整脈の1つになるんだ。
LGLパターンの人は、心房から心室への電気の通りがスムーズすぎることで、電気がぐるっと回る回路ができやすい、と考えられているんだ。
その結果、上の波形のようなAVNRTみたいな上室性頻拍が起こることがあるんだよ。
心房細動・心房粗動との関連
頻度はそこまで高くないけど、LGL症候群とされる人の中には、心房細動や心房粗動を起こす人もいるんだ。
心房でバラバラな電気が発生すると、房室結節のブレーキ次第で心室へ伝わる数が決まるよね。
LGLパターンの人は、このブレーキが弱めなことがあるから、心拍数がかなり速くなるケースもあるんだ。
症状が出ないケース
ここまでは症状があるケースで話したけど、
PRが短くても、まったく症状が出ない人もたくさんいる
これをしっかり覚えておいてね。
健康診断の心電図で、「PR短いですね」って言われただけで、その後ずっと何も起きない人も珍しくないんだ。
だから最近は、「症状がない短PR」を無理にLGL症候群と呼ばずに、短PR所見として経過を見ることも多くなっているんだ。

心電図の波形よりも「実際に困る症状があるかどうか」が大切ってことね。

そうそう!
LGL症候群とWPW症候群
LGL症候群を理解するうえで、必ずセットで出てくるのがWPW症候群なんだ。
実はこれどちらも副伝導路が原因で「PRが短い」という共通点があるんだ。
だから簡単に、この2つの心電図の違いについてまとめておくね。
WPW症候群との違い
WPW症候群では、心房から心室へ直接つながる近道(副伝導路)があるんだよ。

ちなみにこれをケント束っていうよ。
だから心室の一部が、本来よりも早く興奮してしまって、心電図ではデルタ波っていうなだらかな立ち上がりが見えるんだ。
こういった感じだね。

この3点がWPW症候群の特徴なんだよ。
一方でLGL症候群では、心室の興奮はあくまで正常なルートを通るから、QRSは狭く、デルタ波も出ないんだ。
- 「PRが短い+QRSが広い」ならWPW
- 「PRが短い+QRSが狭い」ならLGL
この考え方は、ぜひ覚えておいてね。
LGLの治療が必要な例と治療法
最後は、このLGL症候群の治療についての話になるよ。
まず大前提として、LGLそのものを治療する、という考え方はあまりしないんだよ。

PQとかじゃなくて、困る不整脈が起こるかってことだね!

そうだね!しっかりここまでの内容を理解してくれているね!
治療が必要になる例
LGLパターンがあって、次のようなケースでは治療を考えるよ。
- 動悸が強く、日常生活に支障がある
- 発作性上室性頻拍(PSVT)を繰り返す
- 発作時の心拍数がかなり速く、つらい症状が出る
- 心房細動や心房粗動を起こし、頻脈になりやすい
ただこういう場合にも、「LGLの治療」というよりは、起きている不整脈そのものが治療対象になるんだ。
治療は「LGL」ではなく不整脈に対して行う
ここが、強調したいポイントになるんだだよ。
LGL症候群と呼ばれていても、治療の目的はあくまで
AVNRTやPSVTを止めること、再発を防ぐこと
発作が起きたときは、迷走神経刺激や薬で止めることがあるし、発作を繰り返す人では、予防的な治療を考えることもあるよ。
ちなみに治療法としては、
- 薬でコントロール
- カテーテルアブレーション
こういった感じになるよ
カテーテルアブレーションとは?

カテーテルアブレーションってなに?

カテーテルを使って心臓の内部を焼いてしまう治療だね。
焼くことで、その部分は伝導されなくなる。
こうすることで、PSVTが起きる伝導部分を伝導させ失くするってことだね。
ただこの場合でも、「焼いてLGLを治療」ではなくて、あくまでもPSVTを起きなくするってのが目的だよ。
まとめ
今回は心電図のLGL症候群について解説をしてきたよ。
・LGL症候群は、PR(PQ)間隔が短く、QRSは正常でデルタ波が出ない心電図所見を特徴とする
・原因としては、副伝導路(ジェイムス束)が関係する
・LGLパターンの人では、発作性上室性頻拍(PSVT)、特にAVNRTが起こりやすい
・心房細動や心房粗動を合併すると、心拍数が非常に速くなることがある
・PRが短くても、症状がまったく出ない人も多く、無症状の場合は治療が不要なことが多い
・WPW症候群との違いは、デルタ波の有無とQRS幅で判断する
・治療はLGLそのものではなく、実際に起きている不整脈に対して行われる
・頻拍を繰り返す場合は、薬物治療やカテーテルアブレーションが選択されることがある
こういった内容だったね。
心電図を見て「PQ間隔が短い」と思った時には、LGLを思い出してね。
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