みなさん、こんにちは。
WPW症候群は副伝導路によって
wideQRSが見られる心電図ですね。
今回はそんな副伝導路によって
どんな波形になるかなど
WPW症候群について
詳しく見ていきますね。
WPW症候群とは?
WPW症候群について話をしたいと思います。
まずWPW症候群っていうのは
ウォルフパーキンソンホワイトの
頭文字をとってWPWとなっています。
「Wolf-Parkinson-White」
このWPW症候群に
どうしてなってしまうのかというと
原因としては副伝導路が
存在するからなんですね。
この副伝導路のことを
ケント束って言っています。
通常の心臓の刺激は
洞結節(sinus-node):SA
↓
房室結節(atrioventricular-node):AVnode
↓
His束
↓
右脚(right-bundle-branch)
左脚(left-bundle-branch)
↓
プルキンエ線維(purkinje)
こんな感じで伝わっていきますね。
心臓が動くかというと、
電気信号が心臓全体に伝わることで
心臓って動いてますよね。
この伝導のことを
刺激伝導系っていいますよね。
この中の房室結節という部分なんですが、
実はここってものすごく伝導速度が
遅い場所になるんですね。
P波というのは
心房の収縮を表していますよね。
QRSは心室ですよね。
P波とQRSの間に陽性波にも陰性波にも
なっていない部分がありますよね。
この部分です。
これっていうのは
房室結節を通っている時のものなんですね。
これから見ても
房室結節というのは刺激の伝導が
遅いのがわかりますよね。
もし早ければP波とQRSの間に
こんな隙間がないですよね。
これよりも実は副伝導路の
ケント束は伝導速度が早いです。
なのでさっき見たように
P波とQRSの間の基線部分で
早く心室に伝導が伝わるんですよ。
早く刺激が心室に伝わって、
心室がいつもより早く収縮しますよね。
こう考えた時に
心電図上でどんな波形が出るかを
考えるとすごくわかりやすいんですよ。
実はこのケント束って
心房と心室をつなぐ副伝導路という
話をしたと思うんですが
これどこにあると思いますか?
心臓の右側か左側か真ん中か。
実は全部可能性があるんです。
左房左室を結ぶように
ケント束がある場合はA型
右房右室を結ぶのはB型
中隔部にあるのはC型
という感じで分かれているんですね。
ちなみにA型にあるものだけを
本来はケント束というんですが、
一般的にABC型のどれでも
ケント束と呼んでいるので、
副伝導路と言われたらケント束と
覚えてしまっていいかなと思います。
どんな波形になる?
WPW症候群の
基本的な波形について話していきますね。
1つずつ見ていきましょうかね。
WPW症候群ってさっきも話をしたんですが、
心室に早く伝導が伝わるというのが
この症候群の特徴でしたよね。
そうなるとどんな波形になるのかというと、
通常の伝導によるQRSよりも
早く収縮するということがわかりますよね。
この部分に出てくる波形を
デルタ波って言います。
だからデルタ波分QRS幅は広くなるので
wideQRSになることがわかりますよね。
じゃあそれだけかというと、
そうではないですよね。
話してきたように
P波とQRSの間の部分にデルタ波が
出ているわけじゃないですか、
だからその分PQ間隔が
短くなるということが
わかると思います。
・デルタ波が存在する
・QRSの幅が0.20秒以上
・PQ間隔が短縮
この3つのことについては
A型もB型もC型も
共通して言えることになります。
じゃあなにが違うのかというと、
それを話していきますね。
ちなみにデルタ波を確認するために
一番見やすいのがV1誘導なので
そこを基準として考えますね。
A型について
まずA型の波形から見ていきましょう。
A型はこのような波形になります。
A型はケント束が左房と左室を
つなぐ場所にあるという話をしましたよね。
これによって左室側に
早く刺激が伝わるのがわかると思います。
デルタ波はV1で見たときは
心臓の位置を考えると
向かってくる電位になるので、
陽性のデルタ波が出ることが
わかると思います。
そこから左室側は
すでに刺激がきて不応期に入っているので、
通常の刺激伝導系は
右室側に伝わっていきます。
なのでデルタ波の後の波形は
陽性波になります。
B型について
次はB型について話していきますね。
B型の波形はこのようになっています。
B型というのは右房と右室をつなぐ
副伝導路があるものでしたよね。
考え方としては
A型の時と全く一緒です。
V1に対して向かってきている伝導なのか
それとも離れていく伝導なのかを
考えていけば自然にどんな波形が
出るかはわかると思います。
じゃあ考えて見ましょう。
まずデルタ波が陽性なのか
陰性なのかを考えていきましょう。
右側にあるということなのでパッと
左の方に流れている感じがしますが、
V1の電極位置と洞結節の位置を
考えると実は向かってきていることが
わかります。
そこからは右室側が不応期に
入ってしまうので通常の伝導は
左室側に向かうものだけになりますよね。
だから右側から左側。
つまりV1から遠ざかって
いっているわけですよね。
なのでデルタ波が陽性で
通常の伝導波形は陰性波形になります。
C型について
最後がC型というものです。
こちらがC型の波形ですね。
このC型は中隔部分に
副伝導路があるものですよね。
心臓の向きから考えて
副伝導路がこの位置にある場合は
デルタ波は陰性になることが
わかりますね。
デルタ波が陰性でまた右室側は
不応期になるので通常の伝導は左室側に
向かっているわけですね。
だからデルタ波陰性、
QRSも陰性のパターンになっているわけです。
そういえば以前にこの心電図を見た時に
「OMI(陳旧性の心筋梗塞)ですか?」って
聞かれたことがあったんですよね。
おそらく異常Q波と
間違ったのだと思うのですが、
心筋梗塞の場合は拘束部位によって
V1だけじゃなくて他の誘導にも
異常があらわれます。
あとはwideQRSというものや、
PQの短縮というものが出てこないので、
間違えないようにまず前提として
WPW症候群がどんな波形なのか
しっかり覚えていきましょうね。
最後に少しまとめておきますね。
副伝導路の位置 | デルタ波の向き | 全体の波形の向き | |
---|---|---|---|
A型 | 左房左室側 | 陽性 | 陽性 |
B型 | 右房右室側 | 陽性 | 陰性 |
C型 | 中隔部 | 陰性 | 陰性 |
合併症と治療
次はWPW症候群の合併症と
治療の方法について話をしていきます。
基本的に治療の方法としては
薬による治療かもしくはカテーテルによる
アブレーションがあります。
まずはなぜこのWPW症候群を
治療しなければいけない人が
いるかという話ですね。
確かに波形だけの変化なら
問題ないですよね。
だけど何かしらの問題があるから
治療をしなければいけないわけですよね。
その問題というのが
この波形になるからなんです。
起源はどこだかわかる?
これはAVRTという頻拍になります。
上室性の頻拍の一つですね。
日本語でいうと
房室回帰性頻拍というものです。
字でなんとなくわかると思うですが、
副伝導路を通ることによる頻拍です。
一般的には心房から心室に伝導が
伝わっていますよね。
そうではなく逆に副伝導路を通って
心室から心房に伝導が伝わってしまう
場合があります。
こうなると常に心臓が動いていることに
なってこのような頻拍になります。
薬で抑えるということもできますが、
根治としては副伝導路の部分が原因なので
そこをアブレーションというやり方で
なくしてしまうものもあります。
頻拍になると血液が体に運べないからね。
WPW症候群の人には
こんな波形がみられることもあります。
危険な波形ということはわかりますよね。
パッと思いつくのはなんですか?
おそらく心室頻拍じゃないですかね。
でもこれは心室頻拍ではなくて、
偽性心室頻拍というものになります。
ちなみに英語では
Pseudo(シュード)VTといいます。
これが起こる原因としては
心房細動が合併している場合です。
心房細動は洞結節以外の部分からも
心房が興奮している状態ですよね。
その興奮が心室に伝わるのは
基本的には房室結節だけのはずですよね。
だけどWPW症候群の場合は
もう1つケント束がありますよね。
このケント束は伝導が
早いという話をしましたよね。
だからケント束から
心室に伝導が繰り返し伝わり
wideQRSになります。
心房は常に刺激がされている状態なので、
何回も心室に伝導が伝わって
このような波形になってしまいます。
ここから心室細動というかなり危険な
不整脈に移行することもあります。
まとめ
今回はWPW症候群についての
話をしました。
最後に今回の話をまとめていきますね。
・WPW症候群というのは「Wolf-Parkinson-White」の頭文字をとったもの
・ケント束という副伝導路が原因
・副伝導路の場所によってA型、B型、C型に分けられる
・心電図の特徴は『デルタ波が存在する』『QRSの幅が0.20秒以上』『PQ間隔が短縮』の3つ
・AVRT(房室回帰性頻拍)やpseudo-VT(偽性心室頻拍)というものが起こる場合がある
・治療には薬とカテーテルアブレーションがある
こんな感じの話でしたね。
基本の波形もしっかり覚えて
WPW症候群をしっかり見極めて
いってくださいね。
だからまずは基本波形を知ることが一番重要だよ。
それが異常か正常かって大切だもんね!
心電図はまず波形を見て正常波形と
何が違うのかを知ることが重要なんです。
なのでしっかり基本波形を覚えてくださいね。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。