20代女性からの質問

お腹の中の赤ちゃんについて質問です。
胎児は羊水の中にいると思うのですが、どうやって呼吸をしているのでしょうか?
へその緒が関係しているのは、分かるのですが、もう少し詳しく知りたいです。

こんにちは!
臨床検査技師のぴぃすけだよ。
今回は胎児の循環についての話になるね。
お腹の中には羊水があって、そこに赤ちゃんはいるよね。
でも僕たちが生きるためには酸素が必要。
だけど水の中では呼吸が出来ないよね。
じゃあどうやって胎児は呼吸をしているのか?
質問してくれた女性が言ってくれているように、これには『へその緒(臍帯)』、あともう一つ『胎盤』が大きく関わっているんだ。
それ以外にも胎児には特別な体の仕組みがあるから、詳しく解説していくね。
胎児は羊水の中で「肺呼吸」をしていない

最初に結論から話しちゃうと
僕たちは、鼻や口から空気を吸って、肺に酸素を取り込んでいるよね。
逆に、いらなくなった二酸化炭素を吐く息として外に出しているよね。
これがいわゆる「肺呼吸」というものだよ。

じゃあ胎児は口とか鼻では、何もやっていないってこと?

実は、そういったわけでもないんだ。
お腹の中の赤ちゃんは、生まれたあとに肺で呼吸できるように、呼吸の練習のような動きをしていることがあるんだ。
ちなみにこれを「胎児の呼吸様運動」と呼ぶことがあるよ。
ただ、これは空気を吸って酸素を取り込むための呼吸ではなくて、生まれたあとに肺を使って呼吸するための準備のようなものなんだよ。
胎児の肺の中には羊水が入っていて、肺はまだ空気を取り込む場所として本格的には働いていないんだ。
だから、胎児はお腹の中で「肺を使って酸素を取り込んでいる」のではなく、別の方法で酸素をもらっているということなんだよ。
ここがとても大事なポイントになるよ。

お腹の中では、それようの酸素の受け取り方があるってことか。

そういうこと!そのカギになるのが『胎盤』と『臍帯』になるよ。
そうしたら次は、胎児が必要な酸素をどこから受け取っているのか詳しく話していくね。
酸素はどこから来る?

まず、酸素がどこから来ているのかというと…
お母さんの体の中にある「胎盤」からなんだ。
胎盤は、お母さんと赤ちゃんをつなぐ大切な場所になるよ。
ここから酸素や栄養をお母さんの体から受け取っているってことだね。
イメージとして胎盤は、
お母さんの血液には、肺で取り込んだ酸素がたくさん含まれているよね。
その酸素が胎盤まで運ばれて、胎盤を通して赤ちゃん側の血液に渡されるんだよ。

これって血液が直接渡されているってこと?

これは、ちょっと間違いやすいところだね。
お母さん側の血液と赤ちゃん側の血液は、胎盤という場所で近い距離にあるんだけど、基本的には別々に流れているんだよ。
だから赤ちゃんはお母さんの血液そのものをもらっているのではなく、お母さんの血液から酸素や栄養を受け取っているイメージだよ。
ちなみに赤ちゃんの体で使い終わった二酸化炭素や老廃物は、胎盤を通してお母さん側へ渡されているよ。
だから胎盤は、赤ちゃんにとって
- 肺の代わり
- 栄養を受け取る場所
- 老廃物を渡す場所
こういった、とても重要な役割を持っているんだ。
次は、その受け取った後の話だね。
酸素を含んだ血液は「臍帯静脈」から赤ちゃんへ

胎盤で酸素を受け取った赤ちゃん側の血液は、次に「臍帯」を通って赤ちゃんの体へ向かうんだ。

これってへその緒のこと?

そうそう。へその緒のことを医学用語で『臍帯』っていうから覚えておいてね。
それで臍帯の中には血管が通っているんだ。
その中でも、胎盤から赤ちゃんへ酸素を多く含んだ血液を運ぶ血管が「臍帯静脈」なんだよ。

あれ?静脈って酸素が少ない血液があるんじゃないの?

おっ!いいところに気づいたね。
一般的に動脈は酸素が多い血液、静脈は酸素が少ない血液というイメージがあるよね。
でも、動脈と静脈の分け方は、酸素が多いか少ないかではないんだ。
こうやって名前が決まっているんだよ。
胎盤で酸素や栄養を受け取った血液は、まず心臓に向かっていくよね。
だから酸素が多くても『臍帯静脈』の中を流れているんだよ。
ここから、胎児ならではの特別な血液の流れが始まっていくんだよ。
その特別な流れを理解するために、次は「胎児循環の特徴」を話していくね。
胎児循環の特徴

ここからは、胎児の血液の流れについて話していくよ。
お腹の中の赤ちゃんは、肺で酸素を取り込んでいるわけではなく、胎盤から酸素をもらっているんだったよね。
だから、血液の流れも大人とは少し違っているんだ。
大人の場合は、心臓から肺に血液が送られて、肺で酸素を受け取るよね。
そして酸素をたくさん含んだ血液が心臓に戻り、そこから全身へ送り出されるよ。
でも胎児の場合は、肺はまだ酸素を取り込む場所として働いていないんだよ。
そのため、胎児の体には
こういったものがあるんだ。
この胎児特有の血液の流れを「胎児循環」と呼ぶよ。
胎児循環を理解するときに特に重要なのが
- 静脈管
- 卵円孔
- 動脈管
という3つの通り道だよ。
ちなみに、後の2つの卵円孔と動脈管によって胎児の血液は肺をほとんど通らないんだよ。

なんか難しそうだね…。

ちょっと難しいかもだけど、胎児に酸素を効率よく届ける通り道と覚えてね。
赤ちゃんの体に酸素を効率よく届けるためのバイパスなんだ。
じゃあ、その特徴を詳しく順番に話していくね。
肝臓を一部ショートカットする「静脈管」

まずは「静脈管」から話していくね。
胎盤で酸素を受け取った血液は、臍帯静脈を通って赤ちゃんの体の中に入っていくんだったね。
この血液は、赤ちゃんにとってとても大切な酸素を多く含んだ血液だよね。
体の中に入ってきた臍帯静脈の血液は、まず肝臓の近くに向かうんだ。
大人の体では、腸などから戻ってきた血液が肝臓を通って、栄養の処理や解毒などが行われるんだけど…
胎児の場合は、酸素を多く含んだ血液になるから、できるだけ効率よく心臓へ届けたいよね。
そこで使われるのが「静脈管」なんだ。
静脈管は、臍帯静脈から入ってきた血液の一部を、肝臓を通さずに下大静脈へ流すための通り道になるよ。
下大静脈というのは、体の下の方から心臓へ血液を戻す大きな血管だね。

胎児の場合には、肝臓を通す必要がないから直接心臓に血液を渡すってことだね!

そうそう。ただ全ての血液ではなくて一部が静脈管を通るってことは覚えておいてね。
赤ちゃんの体はまだ成長途中だけど、その中でも脳や心臓など、大切な臓器にはしっかり酸素を届ける必要があるんだ。
だから胎児循環では、酸素を多く含む血液をできるだけ有効に使う仕組みがあるんだよ。
静脈管は、そのためにとても重要な役割をしているんだ。
右心房から左心房へ抜ける「卵円孔」

次は「卵円孔」について話していくね。
卵円孔は、心臓の中にある小さな穴のような通り道になるんだ。
心臓には、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋があるよね。
そのうち、右心房と左心房の間にあるのが卵円孔だよ。
大人の場合、
全身から戻ってきた血液は…
こういった経路をたどっているよね。
でも胎児の場合は、肺で酸素を受け取っているわけではない。
だから、大人と同じように右心房から右心室、そして肺へたくさん血液を送る必要がないんだよ。
そこで役立つのが卵円孔なんだ。
胎児では、右心房に入ってきた血液の一部が、卵円孔を通ってそのまま左心房へ流れるんだよ。
右心房から右心室へ進む血液の一部が、右心房から左心房へショートカットしているということなんだ。
これによって、肺を通らずに左心房、左心室へ進み、そこから全身へ血液を送り出すことができるんだよ。

でも、穴があいているって大丈夫なの?

ここ心配になるよね。でもそこは問題ない仕組みがあるんだよ。
これは出生後には肺が広がって、肺から左心房へ戻る血液が増える。
そうすると左心房の圧が高くなるんだ。
こうなってくると、右心房から左心房へ抜ける必要がなくなって、卵円孔は自然に閉じる方向へ向かっていくんだ。

人間の体って上手くできているんだね。

そうだね。必要な時だけ使えるような仕組みになっているんだ。
肺動脈から大動脈へ抜ける「動脈管」

3つ目は「動脈管」の解説だね。
動脈管は、肺動脈と大動脈をつなぐ通り道だよ。
上でも話したように大人は、右心室から出た血液は肺動脈を通って肺へ向かう。
さらに肺で酸素を受け取ってから、左心房、左心室を通って大動脈へ流れていくんだ。
でも胎児では、肺はまだ本格的に酸素を取り込む場所として働いていない。
さらに、胎児の肺は血液が流れ込みにくい状態になっているんだ。
だから右心室から肺動脈へ出た血液の多くは、肺へ向かうのではなく、動脈管という通り道を通って大動脈へ流れていくんだ。

これで肺を通らずに全身に血液を送ることができるってことだね。

そうそう。胎児にとっては、肺で酸素を取り込む必要がないから、肺にたくさん血液を送るよりも、全身へ血液を回すことの方が大切だからね。
だから動脈管は、お腹の中にいる間の赤ちゃんにとって、とても合理的な通り道なんだね。
この動脈管は生まれたあとに肺で呼吸を始めると、役目を終えて閉じる方向へ向かっていくんだよ。
肺をほとんど通らないことがポイント
そして重要なポイントとして、胎児の血液は肺をほとんど通らないという点なんだ。

酸素は胎盤からもらっているから肺を通る必要がないもんね。

そうそう。しかも胎児の肺は空気じゃなくて液体で満たされているから、肺も広がっている状態じゃないんだ。
だから、胎児の肺は血液が流れ込みにくい状態になっているんだ。
ちなみにこの「血液が流れ込みにくさ」のことを、少し専門的には「肺血管抵抗が高い」と表現するよ。
難しく聞こえるけど、簡単にいうと、
胎児の肺はまだ本格的に働いていないから、血液がたくさん通る場所にはなっていない
ということなんだ。
だから胎児の血液は、肺を通る量を少なくして、別のルートを使って全身へ流れていくんだよ。

それがさっき言っていた卵円孔と動脈管ってことか!

正解!これは胎児循環を知る上で、とても大切な部分なんだよ!
卵円孔は心臓の中で右心房から左心房へ抜ける近道。
動脈管は、心臓から出たあとの血管で、肺動脈から大動脈へ抜ける近道。
どちらも「肺をあまり通らないための通り道」と考えると分かりやすいよ。
こうやって胎児の体は、胎児の環境に合わせた特別な循環をしているんだ。
使い終わった血液は「臍帯動脈」から胎盤へ

ここまでで、赤ちゃんは胎盤から酸素をもらって、その酸素を含んだ血液が臍帯静脈から体の中へ入っていくことを解説したね。
じゃあ、ここで質問なんだけど、

赤ちゃんの体をめぐって酸素を使い終わった血液は、そのあとどうなる?

これはもらうのと逆で、臍帯と胎盤でお母さんの体に戻すってことかな?
その通りだね。
赤ちゃんの体で使い終わった血液は、二酸化炭素や老廃物を含んだ状態で、臍帯を通って胎盤へ戻っていくんだよ。
このときに使われる血管が「臍帯動脈」なんだ。
臍帯動脈を通って胎盤へ戻ると、胎盤でお母さん側とのやり取りが行われるよ。
こうやって赤ちゃん側の血液から二酸化炭素や老廃物が、お母さん側へ渡されるんだ。
それを、お母さんの体で処理してくれるんだよ。
この時に、お母さんの血液からは新しい酸素や栄養が赤ちゃん側へ渡されているよ。
出生後、赤ちゃんの循環は大きく切り替わる

最後に出生後について少し話していくね。
ここまでの話でお腹の中では、
- 胎盤
- 臍帯
- 静脈管
- 卵円孔
- 動脈管
こういった部分が重要な働きをしているという話をしてきたよね。
実は、この部分は生まれた瞬間から大きく変わっていくんだ。

生まれた時に、まず大きく変わるのは何かな?

自分で呼吸するようになるね。
それまでは羊水の中にいた赤ちゃんが、外の世界に出て、今度は自分の肺で空気を吸う必要が出てくるよね。
赤ちゃんが生まれて最初の呼吸をすると、肺に空気が入って肺が広がるんだ。
そうすると、それまで血液が流れ込みにくかった肺の血管が広がって、肺に血液が流れやすくなるんだ。
お腹の中では、肺はまだ空気でふくらんでいなかったから、肺血管抵抗が高い状態だったよね。
でも出生後に肺が広がると、肺血管抵抗が下がって、右心室から肺動脈へ送られた血液が肺へ流れやすくなるんだよ。
これで肺に流れた血液は、そこで酸素を受け取るようになるんだ。
ここから赤ちゃんは大人と同じように、肺で酸素を取り込む仕組みに変わっていくってことだね。
次に肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈を通って左心房へ戻ってくる。
こうなると左心房に戻ってくる血液の量が増えて、左心房の圧が高くなるんだ。
臍帯に関しては出生後に切られて、胎盤とのつながりがなくなるよね。
だから、胎盤から右心房へ戻ってくる血液の流れは減っていくんだ。
この圧の変化によって、右心房から左心房へ血液を流していた卵円孔は、自然に閉じる方向へ向かうんだよ。
同じように、肺動脈から大動脈へ血液を逃がしていた動脈管も、肺が酸素を取り込む場所として働き始めるから、血液は肺へしっかり流れる必要があるんだ。
だから、動脈管も少しずつ閉じる方向へ向かっていくんだよ。
あと、臍帯静脈から下大静脈へ血液を送る近道だった静脈管も、胎盤からの血流がなくなることで役目を終えていくんだ。

これって急に全部なくなるの?

そういうわけじゃないよ。
出生後の変化は「急に全部が完全に変わる」というより、
- 呼吸が始まる
- 肺血流が増える
- 胎盤とのつながりがなくなる
こういったことが起こることで、循環が段階的に切り替わっていくよ。
変化に合わせて、血液の流れが胎児循環から出生後の循環へ変わっていく。
こう考えると、体って本当にすごいよね。
まとめ
今回は『胎児は羊水の中でどうやって呼吸をしているのか?』という質問にたいして胎児循環の話を含めて詳しく解説してきたよ。
最後に内容をまとめておくね。
・胎児は羊水の中にいるけど、大人のように肺で空気を吸って酸素を取り込んでいるわけではない
・胎児の肺は、生まれた後に呼吸するための準備はしているけど、お腹の中では酸素を取り込む場所として本格的には働いていない
・胎児に必要な酸素や栄養は、お母さんの血液から胎盤を通して赤ちゃん側へ渡されている
・お母さんの血液と赤ちゃんの血液は基本的に直接混ざるわけではなく、胎盤で酸素や栄養、二酸化炭素、老廃物などをやり取りしている
・胎盤で酸素を受け取った血液は、臍帯静脈を通って赤ちゃんの体へ入っていく
・胎児循環では、静脈管、卵円孔、動脈管という特別な通り道を使う
・使い終わった血液は、臍帯動脈を通って胎盤へ戻っていく
・出生後は、赤ちゃんが肺で呼吸を始めることで肺血流が増え、胎児循環から出生後の循環へ段階的に切り替わっていく
・その結果、卵円孔、動脈管、静脈管は役目を終えて、閉じる方向へ向かっていく
お腹の中では羊水の中で生きるための仕組みを使っていて、生まれた瞬間からは外の世界で生きるための仕組みに切り替わっていく。
お腹の中と外の世界、それぞれに合わせて体の仕組みが変化するって、本当にすごいことだよね。
ということで、胎児循環について詳しく解説をしてきたよ。
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